色褪せぬまま 見上げ歩くよ

煌びやかな世界の端っこ

紅白の嵐の曲紹介をした岡田さんと井ノ原さんについてぼそぼそと

※岡田さんの「朗読向き」について少々書き足しました。

 

今更ながらに紅白のことを思い出す話です。

20年目にして初出場。そう言われてV6は初出場ながらにたくさんの大役を任せられたり、色んな期待を向けられました。

 初出場へのプレッシャーの掛け方が普通じゃない。初出場にここまで気にかけたことがないのでわからないけれど、初出場はここまで色んなことを要求されるのか、それともV6だからか。その理由は後者だとしたらファンとしては鼻が高い。

結果として、V6の出番は、

などと多数の出演を見せた。これが初出場の豪華さと思ったが、V6の場合はキャリアとNHKに関しての信頼度の高さ故なのではないかと勝手に想像して、テレビの前でにやついた。

 初出場で、久しぶりのバックダンサーをした伍代夏子さんの「ひとり酒」の日本舞踊のV6や、紅白のテーマを背負ったかのような「WAになって踊ろう」について、長々しく感想を書きたいところですが、私が紅白を見て、血が騒いだのは、嵐の曲紹介だった。

3日ほど前から、嵐は白組のトリで、ステージ上でフライングするために、嵐の曲紹介をV6の岡田さんと井ノ原さんがやることは知らされていました。それを知った時はV6の新たな出番に騒ぎ、岡田さんと井ノ原さんの名前しか出ていなかったことに、他の4人は!?と不安がっていたファンも、蓋を開ければ綺麗な衣装に身を包んだ6人が司会の位置にずらっと並んでる姿を見て、安堵をした。

そして、有働さんに促されて、岡田さんがまず口を開いた。嵐の今年*215周年をまとめ上げるような言葉の数々。先輩が見ていた、後輩の姿を語っているような気がして、胸が熱くなった。その次に、続けたのが井ノ原さんだった。岡田さんと打って変わって、井ノ原さんは会場の雰囲気をごっそり嵐に持って行った。トリの嵐へ、見事に意識を誘導した。私はその井ノ原さんの言葉に、聞き惚れた。

私は高校に通う3年間、放送部に所属していました。放送部とは何ぞやと思うかもしれませんが、私の高校の事情で説明すると、学校行事の放送関連の仕事をすべて引き受け、そして年に数回ある大会に参加することが目的の部活でした。私の地域は大会が年に2回なく、地方大会と、放送業界では一番有名な、NHK杯 全国高校放送コンテストだけでした。これに出場するために、毎日部活動に励んでいました。NHKと銘打っているだけあり、どの高校生も力を注ぎました。

その放送の大会は、「アナウンス部門」「朗読読部門」「ラジオドキュメント部門」「テレビドキュメント部門」「創作ラジオドラマ部門」「創作テレビドラマ部門」「校内放送研究発表会」という様々な部門があります。アナウンサーになりたいと志している人が放送部に入ることが多く、大会で優勝することを目指して努力していました。部門ごとに、色々な決まりごとがあり、アナウンス部門は、原稿は生徒が自作し、発表時間を1分10秒以上1分30秒以内で納めなければいけません。

突然何の話かと思うかもしれませんが、私が井ノ原さんの曲紹介を聞いて、思い出したのがこの大会でした。

放送の心得に、「始高終低」というものがあります。文字の通り、文の始めを高い音で、文の終わりになるにつれ音を低くするように読んでいく、というもので、放送の基本の基本で、アナウンサーなら殆どの人がこれを気にかけて文字を読んでいます。そういう読み方をすると聞き手もすとんと気持ちよく聞くことができる。そして時間配分。「この原稿を〇秒で」と決められた中で、どの部分を聞き手に伝えるべきか決め、耳に留めて欲しい情報を大事に読み、時間内に終わらせる。それが大会で、そしてアナウンサーの大切にしていることです。

井ノ原さんはNHKの朝の番組で司会をしているからこれが出来て当たり前、ではないんです。あさイチはどちらかというとかっちりした情報番組ではありません。時間配分はあれど、完全に作られた原稿はありません*3。生の反応をありのまま見せる番組だからこそ、それが視聴率に繋がっていると思います。いつもとは違う環境下の中、あのアナウンサーとも間違えられるような素晴らしい口上。放送の大会で優勝することを3年間夢見て、NHKのアナウンサーの指導通りに練習して、頑張ってきた高校生時代。井ノ原さんのあの曲紹介は、模範としていたアナウンサーの要点を全て満たしていた口上だった。放送に携わって、ずっと憧れていた読み方で、心底凄いと思ったし羨ましいと思った。聞いたときはぶわっと鳥肌が立ったし、あの領域に自分が踏み入れられなかったことを思い出して、とても悔しかった。

 

1月24日のNext Generationで、紅白の曲紹介について触れていた。

井ノ原「ほんっとに、あれ大変なんだね!もうオレ、あの紅白の時間とかさ、大変なんだな~と思って」
坂本「オレひとつオレ感動したのがあってさ、あの最後嵐の、」
井ノ原「あ~曲紹介?」
坂本「曲フリをね、岡田と井ノ原がやったんだけど。あの始めは、まぁ結構ゆっくりめに、ぜひやってください、ゆっくりやってくださいっていう前フリがあったんだけど、やっぱり時間がちょっと押しちゃって~、じゃ「曲フリお願いします」って言った瞬間に、ディレクターが巻きを出したのよ。」
井ノ原「クルクル指をこう回しだしたから。」
坂本「そう、「早くお願いします!」、でも岡田は、ゆっくりやって下さいを知ってたから、カンペをゆっくり読んでたの。でもディレクター焦って、もうすっごい、ね。」
井ノ原「腕グルグルまわしちゃってさぁ~途中から!」
坂本「でも岡田全然それわかんないからゆっくり(読んで)、で、次井ノ原だったのよ。
で、井ノ原それに気づいてて。」
長野「早かったねぇ。」
坂本「すっごい早くブワァーってゆったんだけど、完璧!1秒前に終わったの。」
井ノ原「(笑)」
坂本「オレ感動しちゃってさぁ!」
井ノ原「ひゃははは!!や、オレもう、途中から見てないよ。」
長野「慌てたね。」
井ノ原「見てない!秒数とか。」
坂本「すっげぇなぁ~この人と思って。」
井ノ原「こっち岡田から来たときに、40秒ぐらい欲しいと勝手に思ってたわけ。そしたら、だぶんもう20ぐらいしかないなぁと。で、岡田あとから聞いたら、「え?そんな巻き入ってたの?」って」
長野「気づいてなかったんだよね!あはははは!!」
井ノ原「気づいてないのよあいつ!「知らなかった、」つって。その前に、有働さんと岡田と3人で話してたら、これちょっと余るかもしんないし~早く終っちゃったら~嵐のその転換に間に合わないから、伸ばさなきゃいけない、っていう話をしてたから、曲紹介の前にちょっとトークで揉みましょうと。」
坂本「軽くね、時間調整みたいな感じでね。」
井ノ原「そうそうそうそう!始まったらグルグルグルグル腕まわしはじめちゃって。もう、あらら??みたいな。あれはほんとにキセキですよ。」

実際に取られていた時間よりも短かった。これは生放送なら仕方ないことで、それでも1秒前に収めた井ノ原さんの技量は素晴らしかった。

 

ここで、勝手に放送をちょっとだけかじった私から見た、岡田さんと井ノ原さんの曲紹介についてまとめたいと思います。

まずは岡田さん。

嵐は、今年、15周年を迎えました。全力で走ってきたこの一年、みんなはずっと、一つの言葉が、頭から離れなかったと言います。

それは、感謝という言葉です。

 出だしがとてもしっかりしている。どちらかというと、アナウンスより朗読向き。朗読は一定のスピードで文章を読み、感情の起伏をあまりつけてはいけない。その分、何で表現するかというと、”間”で自分の伝えたいことや大切な部分を際立たせることが必要。岡田さんの場合は1秒や0.5秒の”間”を操ることで、うまく表現していた。

「それは、」の句点で、「感謝」という言葉の前に間を置くことにより、「感謝」の言葉を聞き手に印象付ける。

15年を同じグループでやる、これは大変な事です。メンバーへの感謝はもちろん、支えてくれる、全ての人達への感謝の気持ちが無いと、グループはもちません。

「グループはもちません」という言葉をさらっと流すことにより、次の言葉に意識を寄せる。

だから、嵐はこれまでもずっと、感謝の気持ちに包まれてきたんだと思います。そして、特にこの一年、嵐のみんなが、感謝を胸にやってきたという事は、きっと、嵐が、次のステップへ飛び立とうとしている証拠なんだと思います。

 全体的にゆっくり・しっかりを意識して読むことにより、聞き手に伝わりやすくなっている。単純に一番伝わりやすい方法で、噛んだ場合に聞き手がひっかかる可能性が一番高い読み方。岡田さんの場合、「感謝」に重点的に注目を集める読み方をしているので、次の井ノ原さんとは対照的。

 

次に井ノ原さん。

さあ、2014年も後少しです。

出鼻から早い。しかし、アナウンスとしては最適。早いと感じるのは、岡田さんのゆっくりとした言葉を聞いたので、早いと感じる人が多かったんだと思います。

嵐が胸に抱き続ける感謝の想いが少しでも、多くの皆さんに届いて、

「少しでも」という言葉を強めにいうことにより、印象付けをしている。

そして、2015年、人が互いに感謝し合う気持ちが、もっともっと、日本中に広まる事を願って、そんな思いで聞いて欲しい歌です。

 そして~からは井ノ原さんも秒数を気にしてか、早口になります。けれど、「人が互いに感謝し合う気持ちが」という部分を他の部分よりも大きく言うことにより、気持ちを伝えようという意識が見える。

白組、最後の曲、嵐で2014、サンクスメドレー、どうぞ。

 早口からの、数秒の”間”。この曲紹介のメインである「嵐の曲名を喋る」という大事な場面で、一つ一つの言葉に少しの”間”を入れることにより、時間の微調整と、耳に留めて欲しい情報を聞き手に残るように大事に読む。「嵐で」のあとにある”間”は、グループ名と曲名をしっかりと区切ることにより、曲名を認識づけると同時に、会場の雰囲気をごっそり嵐に持って行くための誘導方法。見事でした。

 

これは完全に私の偏っているかもしれないけれど3年間学んだ技術の範囲で説明できる、岡田さんと井ノ原さんの曲紹介です。岡田さんの穏やかな口調で、後輩の1年を振り返る言葉の数々。丁寧に読むことにより、しっとりと感謝の気持ちが伝えられる。井ノ原さんの後半に連れてどんどん引き込まれるようなどっしりとした口上。読み切った後の歓声は、井ノ原さんの声に引っ張られているようにも感じました。そんな個人的に感動した紅白でした。

 

井ノ原「間に合わないのかと思ったら~。一番嬉しかったのが、坂本長野三宅が「あぁあああっ!!!」ってオレんとこ寄ってきて(笑)」
長野「(笑)」
井ノ原「よかったねぇぇ~!!」とかって(笑)」
長野「(笑)」
坂本「あれはもう感動した!」
井ノ原「女子高生かよっ!!みたいな(笑)」
長野「(笑)」
坂本「もうさすがNHKのアナウンサーと思ったもん。」
井ノ原「や、アナウンサーじゃないっす。」
坂本「さすがですよあれ。」
井ノ原「高卒ですから。」

感動したからと井ノ原さんの元へ寄ってきた坂本さん長野さん三宅さんの女子高生のようなテンション。とても愛しいです。今年もしっかりV6を応援していきます。させてください。

*1:井ノ原さんと有働さん

*2:2014年

*3:勿論、番組の流れとしての原稿は存在する。