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色褪せぬまま 見上げ歩くよ

煌びやかな世界の端っこ

【ネタバレ】ヒメアノ~ル観ました。また観ます。

森田剛

 

 

※ネタバレだよ!!

※この下にヒメアノ~ルのR15に含まれる表現の話、もっと下に感想あるよ!!!
 
6/2:追記しました

 

6/28:ヒメアノ~ル2回目を観に行ってきた感想も書きました。

shbwill.hatenadiary.com

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
色んな人に見て欲しいからまず先に気になって検索してきた人向けにヒメアノ~ルに含まれるR15の表現をざっくりだけど説明。無理なら観に行かなくてもいいんだけど、こんな内容が含まれていると知ってから心の準備をして観に行くっていう手もあると思うのであえて書いています。観に行って欲しいから書いてます。
R15は「性・暴力・残酷・麻薬などの描写や、ホラー映画など、小学生が真似をする可能性のRG12を含む、いじめ描写や暴力、放送禁止用語暴力団もの、偽造犯罪を題材にした作品」という区分で、ヒメアノ~ルで目立った表現はこんな感じ。

殺人(刺殺/絞殺/撲殺/銃殺/轢殺)・いじめ・失禁・強姦(レイプ)・四肢欠損 など

 R指定の表現に詳しくないから何とも言えないんだけど、ひっかかるなら殺人表現が鮮明で痛烈。刺殺が多いんだけど個人的には撲殺シーンがダメな人が多いんじゃないかなって思いました。目をつぶりたくなるほど過激で過剰。それがこの映画の、坂を転がり出すきっかけにも見えたので、私としては撲殺シーンは重要なものだと思っている。

でも映画の最後に待っていたシーンは、90分見てきた世界を変えるものだと思うから、観に行ってあの感覚を直に味わってほしい。

 

それでも身構えてしまう人には事前に知っておくと心の準備はちょっとできると思うので、もっと詳しい殺人方法書いてあるよ

 

 

以上、R15のはなし。これより下は映画の感想(ネタバレ)です。

 
 
 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
ヒメアノ~ルが決まった
まず映画の感想を述べる前に、ちょっとだけ遠回りの話。
この映画の主演が決まったと報じられたのは2015年の3月23日。剛くん*1の初主演(本当は単独初主演*2なんだけど、色んなところで初主演と言われているので今回は大人しくそれに従う)だとネットニュースがにぎわって、私もきゃっきゃと喜んだことを覚えている。単純に嬉しかった。その時はこの映画がR指定つくとは思わなかったので、できることならば剛くんの初主演映画が爪痕を残すものにならないかと願っていた。続々と新しい情報が公開されて、ジャニーズとしては異色のR指定がつくことになったこの映画。あのときは確か、過激な表現があるR指定が付くことに関しては特に嫌な気持ちは持たなかった。凄いなと思っただけだった。まあ今も違和感や嫌悪感はないんだけど。色んな人が映画を、ジャニーズだとは思えない、これはアイドルか、だとか様々な評価を目にするようになって、試写会でも退席者が出るほどだと聞いた。私は応援しているアイドルに、アイドルではない場所までアイドルという要素を求める人間ではないので、ますます楽しみで、剛くんの新たな一面を見れるんだとわくわくが止まらなかった。だって初主演の映画だよ。楽しみじゃないわけがない!と本当に楽しみで。完成披露試写会や先行試写会、ライターの色々な話を聞くたびに、ある意味私の想像していたものとは違った形で剛くんはこの映画で爪痕をしっかりと残しているんじゃないかとひしひしと考えて、それだけで誇らしかった。自分の好きなものが褒められたり絶賛されたりしているのを見るのっていつになっても嬉しいもんだなぁって。お前は何様だと思われるかもしれないけど好きなものが評価されて悪い気持ちになる人はいないでしょ!と今回はちょっと威張っています。そんなわけで、私はヒメアノ~ルに剛くんが主演として一番に名前が上がることが本当に嬉しかったわけです。そのせいで1回目はスクリーンにいる森田剛の姿で喜んでしまったことが、映画の本質を感じるのに邪魔をしたなぁと反省している点です。2回目も観に行くからその時にしっかり狂気と日常のはざまを感じたいところです。
 
 
 
 
本題。ヒメアノ~ルの感想とか。時系列はごちゃごちゃしています。
 
覚えてることをつらつらとストーリーを書き出してみる
 日常と非日常は重なっている。そう感じる作品だったなぁというのが簡素な気持ちです。
最初の岡田くん(濱田岳)とユカちゃん(佐津川愛美)と安藤先輩(ムロツヨシ)の恋愛模様はコミカルで、どこにでもありそうという感じだった。安藤先輩の一挙一動に劇場のお客さんも笑いが零れて、それだけだったらただの楽しい映画に見えたんだろうなぁ。でも徐々に森田(森田剛)が動くにつれて劇場もどことなく重い空気になったり笑いが一切なくなったりして、この映画の二面性を見た気がした。
森田の部分だけを切り取るとそりゃあグロくて悲惨で凄惨な映画だけど、岡田くんたちのシーンがあるからそれを際立たせて、どこにでもある生活がテレビで見ている自分には関係ないと思っていた事件が起こる世界とどんどん混ざり合っていく。それがまた普通にありそうな事件だから一層怖さと気持ち悪さを加速させる。
 
岡田くんが森田を呼び出して居酒屋に誘うシーン。その前に岡田くんを待つ森田が禁煙の場所で煙草を吸ったことをおじさんに注意される姿は、おじさんその人と関わっちゃいけないやつだよ…!と思わずにはいられなかった。「でも煙草吸ってたでしょ」「いや吸ってないんで」「吸ったでしょ」「吸ってないんで。」今吸ってるかどうかの話をおじさんはしているわけではないのに見え透いた嘘をつく。絶対近くに居たら私は関わらないタイプの人間だ。岡田くんと居酒屋で飲みながらカフェで働くユカちゃんの話をしたり、安藤先輩の話をする。「やっぱりあの先輩気持ち悪いと思ってたんだよ」初めて来たと言っていたのに何度も行ったことのあるようなことを岡田くんに言われても初めてだよと嘘をつく。「俺もお前も人生終わってんだよ。何も持ってないやつが底辺から抜け出すことはないんだぜ」森田が淡々と岡田くんに言った言葉はどこか軽いようで悲観しているようにも見えた。
岡田くんとユカちゃんがくっついたシーンは穏やかで、観ている私としては「ユカちゃんかわいい」に尽きる。「それは付き合っていい方の、いいな、ですか?」「付き合えたら嬉しいの、いいな、ですよ」「2人が黙っていたらわかりませんよ」ありそう!こんな恋愛ありそう!ユカちゃんがかわいい!
線路沿いを歩いて帰るときにそっと手を繋いで、安藤先輩にバレないように2人で待ち合わせをしてもんじゃやきを楽しそうに作って、「これから岡田さんといろんなことをしたい」というユカちゃんにいろんなことはなんだと想像したり、「そういうことは枠組み外っていうか」「私は枠組み内だけどな」からのセックスに至る流れも、ありそうな恋愛で、とにもかくにもユカちゃんがかわいい。映画を見終わった後に「肉が食べたい」と言い放った妹が、この映画の救いはユカちゃんにあったと言っていたのに納得した。監督のかわいいを詰め込んだ童貞殺しのユカちゃんにまんまとハマった。かわいいもん。
2人で帰りにコンドームを自販機で買って、そしてそのまま岡田くんの家。童貞の岡田くんとは違って、ユカちゃんは何十人も経験しているからその余裕もあって、岡田くんの背中に抱き着く仕草もふと笑う姿もめちゃくちゃかわいい。ここまでかわいいとしか言っていないけど大丈夫? とりあえずユカちゃんはかわいい。
そして岡田くんとユカちゃんがセックスしている間に―――、狂気が渦巻く。映画の半分が終わった辺りで掠れたタイトルが浮かび上がる。Himeanole。どんよりとした音楽がどこからか迫ってくるように這い寄ってきて森田がドアを閉めたところで音楽は止まった。それが一層不気味だった。けれどわくわくした。タイトルと同じく一番最初に上がった「Morita Go」にわくわくした。
岡田くんとユカちゃんが付き合ったことを知った森田は、高校の同級生の和草くん(駒木根隆介)に電話を掛ける。「高校のときに岡田ってやついただろ? 今から殺して山に埋めようと思うんだけど」予告で何度も聴いた声なのに、映画館で聞いたときの方がひんやりときた。和草くんは昔森田と一緒に河島にいじめられていて、卒業する数週間前に河島を森田と一緒に殺してしまう。目と手と足をガムテープで縛られて身動きができなくなった彼を殴って首を絞めて、最後にはその彼で自慰すらする森田。殺したことで性的欲求が湧いたのかなとそのときは考えていた。
森田に呼び出された和草くんは婚約者と一緒に森田を殺すことにする。森田の家に呼び出されてドアをあけると、和草くんが突然殴りかかってきて、森田を押さえつける。「久美子ロープ!!」婚約者に和草くんは叫ぶ。殺すか殺されるかのせめぎあいがそこにはあった。押し倒されて、押し返すシーンは森田も本気なんだなぁと思うほど顔が赤くなって血管も浮き出ていたので、そこでリアリティを感じてどこかで起きていそうな現場を見ているかのようだった。婚約者の手がうまくロープ*3を渡せず、森田は近くにあったもので和草くんの首を刺す。そして和草くんの頭を鉄の棒で殴る。ぴくぴくと震える足。森田は和草くんの頭に、何度も何度も振り下ろして、殴る。殴る殴る殴る。それを見ているだけしかできない婚約者に森田は迫り、棒を振り下ろした。
もうなんていうか、この岡田くんとユカちゃんのセックスと森田の撲殺のシーンを混ぜた監督は狡いなと思った。一方は幸せに快感だけを追い求めて貪ってるのに、もう片方は鉄の棒で女の頭を永遠と殴り続けている。嬌声とうめき声と、ぶつかる音と振り下ろす音が交互に合わさって、どこにでもある日常が蝕まれていく姿を叩きつけられた。
 頭から血を流してぼろぼろになった体に灯油をかけて躊躇いもなく火をつける。これからどうするかなんて森田は考えていなくて、ただ隠そうとか片付けなきゃ見たいな感じで燃やしているだけにみえた。自分の家なのに迷わず燃やしちゃうんだぜ。その辺りが森田は殺すことにこだわりを持っていないことが感じられる。
やるせない感情をフェンスにぶつけ、それを見ていたOLの後を追い、レイプしようとして殺す。たぶんあれは途中でやめたと思うけど。ちょっとアレな性癖の話だからここは反転してみて下さい。「そのOLが生理だったがために、パンツを脱がす前まで持っていた気持ちが即座に萎えたようにも見えた。興味が無くなった。心底面倒そうな顔。嫌悪すら感じられる表情。そういう性癖を持っている人がいるのも知っているけど、どうやら森田はそれにはあてはまらないらしく、それが逆に普通だけどおかしいを再確認する部分でもあったなーって。」ここまで書いてる自分大丈夫かなって思いましたけど大丈夫です。
 森田はユカちゃんと岡田を探し、その2人は安藤先輩にバレることに怯え。すこしずつ歯車がかみ合い始める。
ネカフェでイヤホンとアイマスクをして眠ろうとする森田の姿はどこにでもいるようなひとに見えたのに、彼の見る夢が過去を語る。高校時代和草くんと共にいじめられていたこと。背中に的を書かれエアガンで撃たれる。弾が当たるたびに痛みによろける。それでもまっすぐに立てと怒号が飛ぶ。その声が森田にはしっかりとこびりつき、森田は自分の頭を手でたたく。耳から入ってきたものを追い出そうとするかのように何度も。予告で強く発していた「死ねって言ってんだろ!!」が森田が誰かに向けて言ったものではなく脳内で響いていた森田が言われたものだと知った時には快楽殺人鬼というフレーズにすこし違和感を持った。
自転車で帰ってきた旦那が見たものは、この家で見ることの無い人間だった。金髪で赤銅のTシャツを着て、カレーを食べ、そして下はトランクス。どちらさまですか、と素っ頓狂な質問をされて、森田はスプーンを置く。まるで水を取りに行くかのように自然に席を立つ森田に、旦那は足元に転がる妻を見つけた。首には延長コード。服は乱暴に剥かれ、なにをされていたのか一瞬で理解できた。妻に何が起こったのか、その感情よりも先に森田が台所から持ってきた包丁が目に入る。走って逃げようとするその背中に何度も何度も刺し、あまつさえ致命傷を負わせた後は先っぽだけで刺すという残虐性。血が滴り、さっき自分が閉めたドアにもたれ掛かるようにして死んだ旦那に興味が無くなった森田はカレーに手を付ける。妻をレイプして殺し、カレーを食べ、帰ってきた旦那を刺し殺し、再びカレーを食べる。ただ食べるという生理現象が抜きんでて森田の色を強くした。その後家人の安否を確かめに警官がやってくるんだけど、そのとき森田はアイマスクとイヤホン*4をつけてソファで寝ていた。上はTシャツ、でも下は青の縦じまのパジャマみたいなズボン。お前それ誰のだよとツッコミたくなるくらい不釣り合いな格好が(なんて言い表せばいいのか分からないからしっくりくる表現で言うと)とにかく気持ち悪い。殺した家のものを普通に着ている現状がとにかくおかしくて気持ち悪い。玄関のドアを開ける前にそのズボンの背中側に直で包丁を隠し、応対する辺りも日常と非日常の境目を感じた。ただの挨拶だけならばそのまま日常で終われた。包丁で刺されるという自分には起こりえないと思いこんでいる非日常はやってくることはなかった。「何日も連絡が取れないって通報が来たんだけど、失礼だけど君は誰?」「弟です」「弟……。ここの人は?」「入院してます」「入院? どこの病院?」「近くです」「近く? どこ?」「だから近くです」森田のその場を過ごすためにすらすらとつかれる嘘。これがうまいわけでもないから逆に怪しい。警官は家の中を見せてくださいと中に入り、そこで不自然に掘り返された庭先、そしてビニール袋に包まれた赤いなにかを発見する。背中から取り出した包丁を警官の左胸に突き刺す。殺されることに必死に抵抗するんだけど最後は馬乗りになられて、一度刺された左胸の傷跡にずぶずぶと包丁を入れていく。震える体と押し込む力。警官に馬乗りになった引きのアングルで、殺人現場に不釣合いなパジャマのズボンが異様だった。普段は目に引くものではないズボンが、不釣り合いで二面性を思い出させる。そこで森田は拳銃を手に入れた。ホルダーから拳銃を抜き去った時の表情は、ただこいつが持っていたから取ったというもので、隣に座っていた妹はそのまま使い方を間違えて暴発させてしまうのではとハラハラしていた。それくらい、拳銃というものに固執していたわけではなく、ただそこにそれがあったから選んだという感覚だった。
 拳銃を手に入れた森田は再びユカちゃんの家へ。ドアをしきりに蹴り続ける森田に隣人が再び注意するために声を掛ける。森田は何の迷いもなく隣人に発砲。予告の最後で発砲して「うっせー」と体をびくつかせた姿にかわいいなーと思っていたんだけど、映画で見るとかわいいどころの話じゃない。その後に続く言葉は「あれ、頭狙ったのにな」。殺意を持って殺すんじゃなくてこだわりのないただの殺人だった。結局隣人は捕えられてユカちゃんのことを聞かれるんだけど、その時にはすでにユカちゃんは岡田くんの家に引っ越していて隣の部屋は空。ガムテープで椅子に縛り付けられて拳銃を向けられる。「あの女どこに行った」「だから知らないって」発砲。森田はユカちゃんを探すことにしか興味が無いからこの隣人がどうなってもいいみたいなそんな雰囲気。個人的に断面図とか顔に傷がつくのが苦手だったから、最も嫌なシーンではないんだけど、口を撃たれたシーンがグロさでいうと1番苦手。口を貫かれたせいでまともに喋れず、最後は頭を撃ち抜かれる。この隣人が殺された非日常は、映画ではない世界でもあり得ることだよなぁとぼんやり考えてしまった。昔郵便局員に成りすました男が住民を刺殺したという事件を思い出す。あれのせいで郵便のおじさん怖いもんなー。いつも本届けてくれるのに。申し訳ない。
岡田くんの勤めている会社に森田が押しかけ、安藤先輩に岡田くんの居場所を尋ねる。安藤先輩はお前ストーカーだろと森田を追いかけ、裏路地をくねくねと曲がり行きついた先で拳銃を向けられるけれど安藤先輩はニセモノだろと好戦的。ユカちゃんと岡田くんを探すことに形振り構っていられなくなっていた森田には、安藤先輩は興味なかったんだろうなと瞬時に分かった。声を掛けられてもスルーで、追いかけられてもすぐに殺そうとはせず。でも突っかかってきたなら別だと股間を撃たれる。股間って。いたぶる目的なのか、殺す目的ではないのか。普通なら狙いやすい上半身を撃つのに下半身。しかも股間。(爆薬を入れて血のりを吹き上げさせる原理だとは言え、さすがにこの一瞬はムロさん自身のことを考えた。案の定痛かったらしい。そりゃあな…。)倒れ込んだ安藤先輩の腰を撃ち、森田は去る。相手が男だし生きているか死ぬかなんて興味がなかったのかもしれない。
 病院に運ばれた安藤先輩の元に駆け付けたのは絶交だと言われた岡田くんとカフェを辞めたユカちゃん。(岡田くんがユカちゃんと付き合っていると告げた時に安藤先輩が大声を出したのがこの映画で一番驚いたところ。飛び上がった。)そこで岡田くんは森田との過去を語る。自分は森田と友達だったけど、森田を裏切ったんだと。いじめが過激になっていく中、森田は学校を休むようになった。河島が岡田くんに言う。「連れてこい」命じられて岡田くんは森田を学校へ誘った。「謝りたいんだって」ここだけは単純に馬鹿じゃねーのとしか思わなかった。馬鹿じゃねーの、お前友達売るの。友達をいじめられている場所に再び呼ぶのかよ。ばかじゃねーの。ばかだよ。呼び出された教室で、森田は河島に言われて自慰をする。クラスメイトの悲鳴と動く手の中で、河島と岡田くんの笑う声がする。「森田くんのあの目が忘れられないんだ」じろりと岡田くんを見た森田の目は絶望を映していたのかもしれない。そこで諦めてしまったのかもしれない。そこで、森田の殺人を許してしまいそうになった自分がいた。なるべくして今の森田になったんじゃない。原因があって彼はこうなってしまった。そう思うとやるせなくて可哀想で、森田の未来が死んでいくのをただ目の当たりにした。
自分のせいだと謝る2人に、これは自分でやったことだからと弱々しい声で答えるベッドの上の安藤先輩。「おれたち、親友だよね」か細い声で尋ねられて、岡田くんがなんともいえない顔をした。こんなことになってまでも俺を親友だと言ってくれるのか、みたいなそんな顔で頷いた。「もちろん」もちろん。観た当初はそれだけで終わった。でも最後のシーンを見たらその「もちろん」がどれだけ森田を奪ったのかと痛感した。
 タクシーで岡田くんの家に帰るユカちゃん。もうここまで観たらわかるよ!これドアを閉めるときに後ろから入ってくるパターンでしょ!と思っていたら、そんなことはなくユカちゃんはドアにしっかりと鍵をかける。台所のシンクの下に買ってきた調味料を並べて、そっとユカちゃんの髪が揺れた。頬をどこからか流れてきた風がさすって髪を揺れる。見上げた視線の先の玄関の隣の窓ガラス。錠前の部分にひびが入って、穴が開いていた。そこから入った風がユカちゃんの髪を撫で―――。ぞわりとした。こわい。怖いだけじゃ済まない。これは現実にも起こり得る侵入方法で一気に森田が私の近くに来た気がした。これがホラー映画なら絶対観るのやめてた。停止ボタンを押すかべつのチャンネルに変えてた。怖いもん。絶対無理。怖い。そしたら誰もいないはずの部屋から見慣れてはいけない金髪が姿を現した。感想書いてるから大人しく進みたいけどここだけは突っ込ませて。ほらやっぱりーーーー!!!!!!
森田はユカちゃんを捕まえて犯そうとベットへ押し倒す。抵抗するユカちゃんに、痺れを切らして顔面を殴りつける。二、三度殴ってユカちゃんが静かになったら服をむしった。「殺してから犯してもいいんだぞ」レイプにありがちな展開だった。日常はすっかりそこには無くて、非日常を連れてやってきた森田が動き回る世界だった。
「今度相談会あるんでしょ。中村くん*5が資料送るから住所教えて欲しいって連絡が来たわよ」岡田くんのお母さんの何気ない言葉が寒気を呼ぶのには十分だった。お母さんからの電話を切って、ユカちゃんに電話を掛ける。何度も発信音だけが響いて、岡田くんは走り出す。途中警察に電話をして、辿り着いた家ではユカちゃんの上に乗る森田。揉み合いになって岡田くんがローターで森田の首を絞めて千切れたり、包丁をつきさそうとしたり。ユカちゃんを背中で庇った岡田くんと森田の会話が、悲しかった。「いじめられていたときに笑っていたのを怒ってるんだよね。謝るよ」「おまえ、居たっけ」「覚えてない……?」包丁を向けられたままの岡田くんの脱力した声。あれで怒っているからおれを狙っているんじゃないんだとも言いたげな表情。正当化してはいけない森田の行動がどうしてもやりきれなかった。カフェで岡田くんと再会した時の「ああ、岡田くん」と答えたのに覚えてないと答える森田。嘘なのかもしれない。でも可哀想に見えて仕方がなかった*6。「もうやめよう」「お前ら殺したらやめてやるよ。どうせ極刑は免れない」揉みくちゃになって刺そうとする最中に聞こえたサイレンに窓を割って外へ転がり出る2人。足を強く打ち押さえながらのたうち回る森田と、息はあるように見えるけれど静かな岡田くん。そこへやってきた警官を見て、森田は包丁を手に取り岡田くんを人質にとった。極刑は免れない。お前らを殺したらやめてやる。そう言ったはずなのに森田は逃げようと岡田くんと足を引きずって逃走を図る。私がヒメアノ~ルを観た中で最も怖いと思ったシーンが、近くにとまっていた車を奪おうと包丁で「おりろ!」と脅し、中にいた男を躊躇わずに刺す場面。これが私の生きている現実が映画とリンクした場所だった。今まで森田が殺してきた人間のことはどこか遠くの映画の中だけのものだと思っていたけれど、これは私の周りでも実際に起こりそうで背筋が凍った。映画が終わった帰り道からしっかり車の鍵は閉めるようになったくらい恐ろしかった。男を刺殺し引きずりおろして岡田くんを後部座席に乗せる。そしてバックで追って来る警官を轢いた後、道路に倒れている男の頭を轢いた。顔をしかめた。
車を運転する森田はどこへ行くつもりだったのだろうか*7。この映画の中で森田がこんなに必死になったのを初めて観たかもしれない。もう終わりに近いのに。後部座席に乱暴に乗せられた岡田くんの荒い息が聞こえる。ふと暗かった画面が朧げな風景だけに切り替わる。通学路、学校の中、道端に咲いた花、家。「俺〇中の森田。ねえ岡田くんはもう誰かと喋った?」「友達にならない?」*8声だけで蘇る森田と岡田くんの高校時代。岡田くんは森田の初めてできた友達だった。優しさの裏に緊張感を持った声が今の森田からは想像できない。森田のあの声を誰かに向けることはもうなくなってしまった。「もうやめよう」運転する森田に岡田くんが声をかけ、森田は声を荒げて岡田くんの足を包丁で刺す。前を向くと犬を連れて散歩をするおじいさんの姿。今の森田なら迷わず轢くと思った。けれど大きくハンドルを切り、電柱に激突。へこんだ車体からは白い煙が上がり、森田の頭からも血が流れる。岡田くんに振り向いた森田は、明るい声で岡田に喋りかけた。「あれ?岡田くん?」「借りてたゲーム、返さなきゃ」車をごそごそとあさり、何かを探す。「おかあさん、麦茶2つ!」今までの雰囲気とは打って変わって、場違いなほどに明るい声と違和感しかない行動。それを岡田くんは何も言わずに見つめる。さっきまでの森田はそこにはない。いるのは高校の時知り合って友達になって裏切った森田。追ってきた警官に無理矢理運転席から連れ出された森田の片足は欠け、それでも森田は笑って言った。「また遊びに来てよ」森田は、岡田くんとの楽しいあの日の中に居た。「うん」力なく頷いた岡田くんの声は森田に届いたのだろうか。
目の覚めるような青い空、引き立つほどの草木の緑、陽炎のように揺らめく太陽の暑さ、羽を守るためにつけられた扇風機のガードの埃、首輪に繋がれた白の犬、テレビを食い入るように見つめてカーレースを楽しむ2人の姿。空になったグラスを見て、彼は大きな声で言った。『おかあさん!麦茶持ってきて!』

 
 わるいのはだれだったのか 
まとめて色んな感想を書きたかったはずなのにどう表せばどこの話をしていいのか分からない。
もしこれが現実にあったらどう思っただろうな、と考えた。人を殺すことはもちろんいけないことだし理解はしてはいけない。そう思っていてもどうしても森田が哀れでかわいそうで高校生のあの日から失われてしまった未来を焦がれてしまって仕方がなかった。安藤先輩と岡田くんの「親友だよね」「もちろん」のシーンがとても憎くて、森田が救われなかったことが悲しかった。
最後のおじいさんと犬を轢かなかった場面、最後に森田の思い出として残っているか分からないあの夏の日の庭先に居た犬を見て、だから森田は轢けなかったのかもしれないと考えた。轢くと思った。けれど轢けなかった。運転手の反射みたいなもので大きくハンドルを切った。よく考えると映画に動物が出てこなかったんだよね。犬も猫も。なんとなく、そこが気になっている。
どうも初めてのR15ということで身構えすぎて起こる事柄をありのまま受け取って自分の中での感想を持てなかったので、また観に行ってきます。剛くんが「最後のシーンのためにこの役をやりたいと思った」「最後まで見て欲しい」って言っていたのを、どう受け止めたいか、2回目ではっきり決めたい。
ただ、映画を見終わって心底思ったのがヒメアノ~ルの公開が夏じゃなくて本当によかった、ということ。もしヒメアノ~ルが夏の公開だったら。どれもすべて森田の夏に繋がってしまって恐ろしい。彼が楽しげに純粋に友達に笑いかけたあの夏に取り込まれてしまう気がした。映画館を出ると、梅雨にしては晴れやかな空が広がっていた。あの朧げの蜃気楼の夏が脳裏に浮かんだ。もし夏だったら、私はあの夏の少年に憑りつかれていただろう。夏じゃなくて本当によかった。
 
追記:
更新したら書き忘れていたことを思い出したので、まだ2回目に行っていないしここに書いちゃえと書き足しています。
 
森田がユカちゃんを狙う理由がわからない
これ。そりゃ(要約すると)森田が理由もなく人を殺す映画だけど。どけといってもどかないから殺したり、殺されそうになったから殺したり、レイプしおわったから殺したり。森田は行き当たりばったりの殺人を繰り返すわけですが、どうしてユカちゃんを追うことになったのかさっぱりわからなくて。漫画は3巻までしか読んでいないから決めつけたことは言えないんだけれど、確か漫画だとユカちゃんが昔好きだった人に似ているから狙っていたと表現されていた気がする。ちゃんと覚えていないからはっきり言い切ることはできないんですが。だからこそ映画でユカちゃんをしつこく狙う理由がわからないなぁって。
 
殺意を持った殺人
上の話とちょっとだけ繋がるんですが、映画中で森田が「殺す」と決めて殺した人物が2人。いじめの主犯の河島と岡田くん。いや岡田くんは殺してない。映画で森田は和草くんと婚約者、アパートの住人の3人(後述にて)、OL、妻と旦那と警官、ユカちゃんの隣人、(殺した表現はないけれど多分殺しただろうなと私と妹は思っているのでカウント)パチンコ帰りにカツアゲしてきた2人、(殺していないけれど)安藤先輩、車から引きずり出すために刺し殺して轢いた男性、どれも邪魔だからという理由で通ってしまうほどの計画性がないのない殺人。一方河島は山で目と手と足をガムテープでぐるぐるに縛って殴ったり首を絞めたり、確実に「殺意」を持っていたぶった結果の殺人。岡田くんに至っては映画の中で唯一森田が口にした「殺意」だ。「今から殺して山に埋めようと思うんだけど」殺すことに関しても、「今から」・「山に埋める」と計画があるようにも見える。これを考えるとやっぱり森田は高校1年生のままだったのかもしれない。岡田を殺すという理由はもしかしたら、上の映画では明かされなかった昔好きだった人に似ているユカちゃんを取られたと思って殺すに至ったのかもしれない。うーん。わかんない。
 
森田が殺した人数

これは私のただの趣味……って言ったらちょっと危ない人に聞こえると思うんですけど、私が映画を観終わって妹とまず最初にかわした会話が森田が殺した人数の把握。これはただ覚えているうちに書き残したいだけです。

河島(過去)/山でガムテープで縛って動けないようにして、棒で殴ったり首を絞めたりして和草くんと殺害。山に埋める。最後は死体で自慰をする。

和草くん/殺されかけたので殺した。首に鋭利なもの(致命傷だが死にはしないもの)を刺し、和草くんが持ち込んだ棒で殴打。撲殺。

婚約者/和草くん同様殺しに来たので殺した。頭を中心に殴打。失禁しても気に留める様子もなかった。映画中で殺した女の中で唯一レイプをしなかった(ユカちゃんに殺してレイプしてもいいんだぞって言ってるし)。撲殺。灯油をかけて火をつける。

アパートの住人(3人)/森田が部屋に火を放ったことによりアパート自体も燃え、住人3人が巻き添えに。描写はなかったけれど、部屋から2体の焼死体と言っていたニュースでテロップで5人死亡と書いてあったので3人死んだんだろうなという認識をしています。

OL/森田を見かけて変な人と表現し、後を付けられてレイプされる。個人的には未遂かなぁって。そういえば森田が女性をレイプするときに大声で怒鳴ったり暴力をふるったりと女性に圧倒的優位を見せつけて抵抗できなくする手法を使ったのをみて、リアリティの追及が凄いなと思った。殺した描写はなかったけれど、その部屋がブルーシートで覆われて警察が来るシーンがあった。

妻/レイプされた前後は不明だが、延長コードで絞殺。

旦那/帰宅した旦那を台所の包丁を使って刺殺。背中を中心に浅く刺したりと何度も刺す。

警官/家人の様子を見に来た警官の心臓を包丁で刺す。一度刺した部分にまた包丁を入れる辺りはばれたから殺すのか、それとも殺せるからそこを狙うのかわからなかった。

パチンコ帰りにカツアゲしてきた2人/この2人は死んだかどうかの描写が完全に無いため想像。生きてる可能性もある。森田がパチンコで勝っていたのを見て、帰りに待ち伏せしてカツアゲをする。森田が抵抗してカッターを出すものの、殴りかかってくる→森田が怪我したシーンと繋がるので安否が不明。森田がそのままカツアゲされただけかもしれない。あ、よく考えると直接死んだかわからないシーンだと警察が来たことで死んだって認識させられるから死んでない可能性が高いかもしれない。

ユカちゃんの隣人/銃殺。1発目がどこにあたったのか覚えてないけど、森田が「頭を狙ったつもりだったんだけどなー」と呑気に言っていたのを思い出す。頬に1発、最後に頭に1発。計3発。痛い。

車から引きずだされた男性/妹曰く一番のとばっちり。森田が逃げるために路肩に車を停めていた男性を刺して殺し、引きずりおろされた後、頭を車に踏まれる。刺殺に轢殺のコンボとか救われない。「次は幸せになってもらいたい(妹)」

 

 

 

 

*1:私は彼のことをいつも「森田さん」と呼んでいるけれど、今回は紛らわしいので森田剛を指しているときは下の名前で書いている

*2:剛くんは2003年に上映された「COSMIC RESCUE」のComing Century主演が初主演

*3:ロープと言っていたけどアレはビニールひもかなぁ

*4:イヤホン着けてたかな……2回目でちゃんと確認する

*5:名前は確かではないけど、中村だった気がしないでもない

*6:私は涙腺が弱いのでここら辺で泣いてた

*7:冷静に考えてしまったけれど、窓から落ちた時に右足は折れてるだろうにそんなに器用に運転できるのかなぁと思ってしまった。

*8:ここも泣いてたから覚えてない